脱初心者!さらに上手くなる「ガレージキットの作り方」~中級編~
- 天城ハコネ
- 2月9日
- 読了時間: 13分

こんにちは天城ハコネです。
以前書いた記事、初心者向け講座「ガレージキットの作り方」がご好評を頂きましてありがとうございます。
そこで今回は、紹介しなかった道具や技法などを、初心者向けから1歩進んだ「ガレージキットの作り方」講座を書いていきます。
特に、メタリック塗装や光沢塗装、アイペイント(瞳の面相)について詳しく解説してますので、ぜひ御覧ください。
目次
■塗装
∟光沢塗装
∟髪
■完成写真
●制作キット紹介

今回制作するのは、前回に引き続きキャラグミンから「すーぱーそに子(そに子、対魔忍になりまうs♪ver.)」を作っていきます。
光沢仕上げやキャンディ塗装、マスキング作業と、初心者からのステップアップに丁度いいキットになっています。

パーツ数は48。
わりと細かく分割されていて、マスキング作業が最小限になるように配慮されています。
また、抜きの精度も高いため、各パーツの修正も楽そうです。
■パーツの整形と表面処理
今回の解説では、パーツチェックや離型剤落とし等の基本的なことは前回の解説に譲り、紹介していなかった技法や工具を中心に解説していきます。
●パーツの歪みの修正

ガレージキットのパーツは複製の際にシリコン型が歪んでしまったり、柔らかいうちに変な力が掛かって歪んでしまうなど、様々な原因でパーツが本来の形より歪んでしまうことがあります。
胸パーツの丸で囲んだ箇所が歪んでいて、隙間が出来てしまうので修正していきます。

歪み修正方法は、パーツに熱を加えて柔らかくして矯正します。
一般家庭にある熱を加えられる機器と言えばドライヤーですが、パーツが柔らかくなるほど加熱するには時間が掛かり、矯正した後に加熱不足のせいかパーツが元に戻ってしまうことがあります。
そこで使用するのがドライヤーよりも高温の温風が出せるヒートガン。
すぐにパーツが柔らかくなり、しっかりと加熱されるおかげかパーツが元に戻ってしまうこともないです。

加熱のさいには、火傷しないようにピンセットで掴むなどして作業します。
すぐに柔らかくなるので加熱し過ぎに注意。
場合によっては焦げます。

パーツが冷めない内に押し付けて矯正します。
パーツが熱いので、ここでもやけど火傷に注意。

隙間がなくなり、成功です。

続けてヘッドホンのヘッドバンド部分が歪んでいるので、こちらも直します。

ピンセットの厚みが添え木代わりに丁度良かったので、真ん中に挟んで加熱します。
細いパーツを加熱して柔らかくなった際に、グニャっと曲がって取り返しが付かなくなることがあるので慎重に作業します。

変に曲ることなく修正完了。
●パーツの隙間の修正

脚パーツのふくらはぎ部分に隙間があるので修正します。

離型剤としてメンタームを脚パーツ側に塗り、さらに、その上から瞬着硬化スプレーを吹き付けます。

瞬間接着剤+ベビーパウダーを混ぜた瞬間パテを、ふくらはぎパーツ側に塗ります。
塗る範囲がわかり易いように、印を付けておくと良いです。

ムギュッと貼り合わせて、外にはみ出せば成功。
瞬着硬化スプレーを吹き付けて、外側も硬化させます。
足りない場合は上から瞬着パテを足していきます。

貼り合わせたまま、ヤスリである程度まで整形します。

慎重にパーツを外して、形を整えて仕上げます。
外れにくい場合は、パーツに軽く衝撃を与えると外れやすくなります。
小さい面積なら離型剤をしっかりと塗っていれば簡単に外れますが、大きい面積を一度にやろうとすると、外れにくいので注意が必要です。
●塗装の為の表面処理
今回のキットでは、光沢塗装やメタリック塗装、キャンディ塗装を行うので、綺麗に仕上げるためにしっかりとした下地処理を行っていきます。

一通り表面処理が済んだら、光沢塗装や金属色の塗装を行うパーツに、600番のヤスリで水研ぎをしていきます。
水研ぎを行うメリットを簡単に説明すると
・目詰まりしづらくヤスリが長持ち
・削りカスが水に吸収されて流され、削りカスによる余計な傷がつかないので、空研ぎよりもキレイに仕上がる
ただし、研いでるパーツ表面の状態が視認しづらいというデメリットがあります。
そのため、パーティングラインを整形するときや、キズや気泡を消す段階では空研ぎを、表面を整える段階では水研ぎと使い分けています。
水研ぎが終わったら、削りカス落としと塗装前の油分落としを兼ねて、洗剤で洗ってからサフ吹きに入ります。

サフを吹いて、しっかりと乾燥させたら、1000番のヤスリでもう一度水研ぎをします。
ある程度研けたら、削りカスを落として、再びサフを吹いて仕上げていきます。

他のパーツも仕上げて準備完了。
塗装に入ります。
■塗装

実作業に入る前に、資料をよく見て塗装プランを考えます。
使用する塗料の選択から、塗装する順番や仕上げ方法などを、この段階で決めておきます。
●メタリック塗装

今回使用するシルバー塗料はこの三つ
・Mr.カラー スーパーファインシルバー2
・Mr.カラー GXラフシルバー
・Mr.カラー GXホワイトシルバー
同じシルバー部分でも、材質や場所によって塗り分けることによって、情報量を増やしていきます。

メタリック塗装は下地色の影響が大きく、基本的には、黒色を下地に使用することで、メタリックならではの重厚さと輝きが得られます。
逆に白色を下地に使用すると、軽い感じに仕上がるので、場所によって使い分けていきます。

先ずは下地色のブラックを、ウェット気味に、垂れる寸前まで吹付けてツヤを出します。
下地処理のおかげで、吹きっぱなしでもツヤが出でいます。

脚や手の鎧部分は、スーパーファインシルバー2を使用して、輝く金属を表現します。
エアブラシでのメタリック塗装のコツとしては、Mr.カラーなら乾燥の早いラピッド薄め液で濃いめに希釈することで、塗装面での金属粒子(アルミ顔料)の泳ぎが抑えられて、キレイに粒子が並びやすくなります。
塗装時には空気圧をやや高めにして、ウェット感を出しつつも、一気に吹きすぎないで塗装します。
ガイアノーツ場合は、メタリックマスターでやや薄めに希釈して、空気圧を弱めで一気に吹きすぎないなど、Mr.カラーとは逆の塗装方法になります。

ヘッドホンのシルバーは軽い感じを出したいので、下地色は黒色でなくガイアノーツ ニュートラルグレーⅣを塗ります。

GXホワイトシルバーを塗ると、ヘッドホンによく使われる、明るいシルバーになりました。
ちなみに、メタリック塗装にラッカー系のクリアコートを行うと、クリアーの溶剤によって塗膜が侵食され、粒子の並びが乱れてメタリック感を損なってしまいます。
そのため、メタリック塗装ではなるべくクリアコートを行わないのですが、デカール貼りなどでコートを行うときには、水性塗料を使用して塗膜が侵食するのを防ぎます。

キャンディ塗装の下地となるシルバーも軽い感じしたいので、こちらもニュートラルグレーⅣを塗ります。

GXラフシルバーでギラギラに仕上げます。
この後にクリアカラーを塗り重ねて、キャンディ塗装に入ります。
●キャンディ塗装

キャンディ塗装に使用するクリアカラーを調色します。
GXクリアピンクにGXクリアパープルを混ぜ、クリアマゼンタを調色。
ちなみに、調色した塗料の一時保存には、写真に写ってるテイクアウト容器が便利です。

調色した塗料をムラが出無いように吹き付けていきます。
クリアカラーは1回の吹付けでも薄くしか色が乗らないため、慌てて何度も吹き付けてムラになってしまうことがよくあるので、注意して塗ります。
また、各パーツの色の濃度が均一になるように、こまめにパーツ同士を比較しながら塗っていきます。

シャドウにGXクリアバイオレットを吹いて、仕上げにGXクリアピンクでオーバーコートして、全体を整えて完成です。
キャンディ塗装らしい、クリアカラーの深みとシルバーの輝きが表現できました。

続けてイエローのキャンディ塗装を行います。
クリアーイエローはちょっと色が薄すいかなと思い、ガイアノーツ 純色イエローをクリアーで薄めて使用します
純色カラーは隠蔽力が弱いため、クリアーカラーの代わりに使う事もできます。

ムラ無く吹付け、シャドウにGXクリアオレンジを吹いて完成。
百式のようなゴールドに仕上がりました。

メタリック塗装にマスキングをしたさいには、剥がすさいに金属粒子を持っていかれるのを防ぐために、慎重にマスキングを剥がします。
●光沢塗装

胸パーツなどの光沢塗装を進めていきます。
先ずはホワイトで、縁のライン部分を塗っていきます。

縁のライン部分をマスキングしていきます。
ライン部分は凸形状なのでマスキングが少し難しいですが、慎重にやっていきます。
今回のような曲線のマスキングには、ハセガワのマスキングテープ【クレープ紙 粘着テープ】が、粘着力があって曲線に馴染みやすくてオススメです。

ここからの塗装は、水性アクリル塗料を使っていきます。
水性塗料は乾燥後に「マジックリン」で拭き取ることが可能で、マスキング漏れや余計な塗料を、ラッカー塗料やエナメル塗料に影響を与えずに拭き取れます。

ブラック+ホワイト+純色マゼンタを混ぜてベースとなる色を作り、シャドウにスモークグレー+ブラックを吹きます。
水性塗料をエアブラシで吹く場合は、薄め液との割合は1:1を基準してに薄めて、空気圧はラッカー系よりもやや高圧で吹くと上手くいきます。

マスキングを剥がし、ハミ出した塗料をマジックリンで拭き取り、修正します。
わりと簡単に拭き取れるので、ラッカー系の修正よりも大幅に時短が可能になります。
拭き取った後は、念の為に、流水でマジックリンの成分を流しておきます。

光沢を出すために水性クリアーを吹きます。
水性クリアーはラッカー系のクリアーに比べて、吹きっぱなしでも、しっとりしたツヤが出るので今回使用しました。
吹付け時には、空気圧を落としてエアブラシを対象物に近づけ、垂れる寸前まで吹き付けるとツヤが出ます。

吹きっぱなしでもツヤツヤですが、さらに研ぎ出しを行います。
クリアーを吹いて数日乾燥させたら、1500~2000番のヤスリで水研ぎします。
下の塗膜を削ってしまわないように、慎重に研ぎ出しを行い、塗膜が削れてないかヤスリの研磨面を頻繁にチェックします。

もう一度クリアーを吹いて、光沢塗装の完了です。
塗装面がまだ波打ってる場合は、ヤスリ掛け→クリアー塗装を繰り返します。

同時進行で網タイツパーツも塗装します。
レッドブラウン+ホワイト+純色マゼンタ+純色イエローでタイツ部分を塗り、シャドウにGXクリアブラックを塗ります。
そうしたら、網タイツ部分をマスキングして、上記の水性塗料で他の部分を塗装します。

網目が凹モールドになっているので、エナメル塗料のブラック+レッドブラウンでスミ入れを行います。
凹モールドが太く、浅めなので、ほどほどに薄めてスミ入れします。

光沢塗装を行って完成です。
●髪

髪パーツの塗装に入ります。
ベースとなる色は、ピンク+純色イエロー+ホワイトで塗装。
シャドウはGXクリアピンクで塗り、髪の先端部分のハイライトは、やや黄色によせた白色が欲しかったので、ガイアノーツ ノーツフレッシュホワイトで塗装。

このような複数に分割された髪パーツは、組んでからシャドー吹きやハイライト塗装すれば、バラバラの状態で塗装するより一体感ある仕上がりになります。

髪の裏側の塗装には、水性 エメラルドグリーン+純色シアン+ホワイトで、マスキング無しで塗装し、マジックリンで余分ところを拭き取ります。
色の境目が不明瞭だったので、取りあえず色を吹いてみて、様子を見ながら拭き取ってみました。
これができるのも、水性塗料の強みです。

前髪にハイライトを入れます。
エナメル 蛍光イエロー+ホワイトを筆で描き込みます。

以上で、アイペイント以外の塗装が完了しました(肌色の塗装は以前の解説を参考にしてください)。
組んでみて、特に問題無さそうなので、次の工程に進みます。
●アイペイント(瞳の面相)

ここからアイペイント(瞳の面相)に入ります。
先ずは下準備として、顔にクリアコートを行い、ツヤ有り状態にします。
これは肌色の保護と、何度も描いたり消したりして、塗料が滲むのを防ぐ役割があります。

朱色のエナメル塗料(デッキタン+純色イエロー+マゼンタ)で下書きしていきます。
元絵や作例を参考に、輪郭や瞳孔、ハイライトを大雑把に描いてみます。
また、アイペイント中は髪パーツを組んだまま作業すると、バランスや目線などが確認しやすくなります。
また、可能ならば、前髪も組んだまま描きます。

表情を見やすくするため、先に口元を描き込みます。
下書き中は、顔を様々な角度で見たり、写真に撮って客観的に見たり、写真を反転させて歪んでいないかをチェックしたりして、描き込んでいきます。
また、元絵や作例と比較して、瞳の大きさや、位置などのバランス、目線もしっかりとチェックします。

下書きが終わったら、ブラック(ブラック+レッドブラウン)で清書します。
端の方の下書きの朱色と、グラデーションになるよう色を乗せていきます。

輪郭を描き終わったら、よく乾燥させて、ラッカー系でクリアコートします。
エナメル塗料が侵食されないように、1回目はふんわりと軽く吹いて、2回目からしっかりと吹きます。
クリアコートすることで、この後の工程でエナメル、水性塗料で描いたり消したりしても、輪郭が保護されて作業しやすくなります。
ただし、クリアコート後に輪郭を修正しようとしても難しいので(追加の描き込みはともかく、消すのは至難の業)、慎重に作業を進めます。

大まかにマスキングして、水性ホワイトをエアブラシで吹いて、白目の部分を塗ります。

余分な所をマジックリンで落としてから、白目の影色を塗ります。
よく乾燥させたら、再びクリアコート。

瞳の虹彩をエアブラシで塗ります。
水性レッド→ココアブラウン→ブルーの順に塗り、グラデーションを付けていきます。
虹彩の輪郭を描いたら、再びクリアコート。

虹彩上部の反射光、下部の黄橙色をエアブラシと筆で描き込み。

ハイライトを描くと、ほとんど完成ですが、もう少し描き込みます。

眉毛、瞼の影、輪郭に青色や紫色のラインを足したり、追加のハイライトなどを描き込み、アイペイント完了です。
次の工程に進むため、つや消しクリアーを吹きます。

タミヤ ウェザリングマスター、クレオス ラスキウス デコでメイクを施していきます。

頬のチーク、目元のアイシャドウ、唇の下にメイクします。
はみ出た部分は、綿棒で拭き取ります。

つや消しクリアーを再び吹いて、メイクを定着させます。
仕上げに、頬にハイライトを入れ、アクセントに下唇にクリアーを塗って完成です。

実際に組んでみて、出来栄えを確認。
大丈夫そうなので、全ての塗装が完了し完成です。
■完成写真



以上で、「ガレージキットの作り方」~中級編~は完結になります。
この記事を参考に、ガレージキットを制作してみてはいかがでしょうか。
長い記事を最後までお読みいただきありがとうございました。