初心者向け講座「ガレージキットの作り方」を解説 自分で美少女フィギュアを作ってみよう ~塗装編~
- 天城ハコネ
- 2023年3月7日
- 読了時間: 12分
更新日:2月9日

~組み立て編~ からの続きです。
今回から塗装編に入ります。
目次
■工具紹介
塗装に必要な工具を簡単に紹介していきます。
一通り揃えようとすると、お金と設置場所が必要になりますが、キットを何体も作り元を取るつもりで揃えてみてください。
エアブラシ

圧縮空気で塗料を霧状にして吹き付け、グラデーションなどを表現するための器具。
模型用ではノズル口径が0.2~05㎜と種類がありますが、0.3㎜が一番扱いやすく汎用的に使用できるため、最初のエアブラシは0.3㎜をオススメします。
私はアルミボディで軽量な、エアテックス「ビューティフォー+」を愛用しています。
軽量なため、手に負担が掛からず、長時間の塗装作業も楽です。
コンプレッサー

エアブラシには圧縮空気を作り出す、コンプレッサーも必要です。
通常の塗装には、小型、静穏タイプの定格圧力が低いコンプレッサーでも大丈夫ですが、
サフ吹きやメタリック塗装も行う場合には、定格圧力0.1MPa以上のコンプレッサーが必要になってきます。
塗装ブース

有機溶剤を扱う塗装作業では、塗装ブースなどの換気設備を必ず設置してください。
必要なモノが揃っていて、すぐに設置できる市販の塗装ブースと、自分の作業環境に合わせて、自由に設置できる自作塗装ブースなど、自分の予算や場所を考えて設置しましょう。
私の塗装ブースは、ダクト用換気扇と大きい収納ケースの組み合わせで構成されており、有機溶剤の取り扱いをブース内で完結することによって、溶剤の蒸気を効率良く排出するようになっています。
塗料・うすめ液

エアブラシ塗装では、乾燥が早く塗膜が頑丈、そして色数豊富なラッカー系塗料の「Mr.カラー」と「ガイアカラー」を中心に使用していきます。
筆塗りの場合は、塗料のノビが良く、乾燥後に溶剤で拭き取れて修正が容易な、エナメル塗料が最適です。
「水性ホビーカラー」などの水性塗料は、エアブラシ塗装、筆塗りを問わず広く使用可能で、また「マジックリン」を使えば、乾燥後に塗料を拭き取れるので所々で活躍します。

ラッカー系うすめ液として、「Mr.カラーうすめ液」「Mr.カラーレベリングうすめ液」「Mr.カラーラピッドうすめ液」などがあります。
それぞれの特徴は以下の通りになります。

GSI クレオス Mr.HOBBY公式サイトより引用
私は光沢塗料は「Mr.カラーレベリングうすめ液」を、それ以外は「Mr.カラーラピッドうすめ液」使用しています。
※Mr.カラーのうすめ液をガイアカラーに使用、またその逆の組み合わせでも使用出来ますが、予めテストして問題ないか確認してから塗装してください。
筆

エアブラシでは難しい、細かい場所を塗るのに使います。
最初は平筆、面相筆などの基本的な筆を買い、必要になったら買い足すのがいいでしょう。
塗装用持ち手

塗装中にパーツを保持するのに使用。
ワニ口の持ち手、目玉クリップの持ち手、割り箸に真鍮線を差して自作した持ち手を、主に使っています。
湯口部分をワニ口やクリップでつまんだり、パーツに穴をあけて、そこに差し込んで使用します。
マスキングテープ

マスキングテープとは、非塗装部分を保護するための、粘着力の弱いテープのことです。
紙製のテープの他に、液体状のマスキングゾルがあり、簡単に剥せるビニール系、ナイフで切り抜けるゴム系の2種類があるので、用途に合わせて使い分けます。
デカール用品

今回のキットでは、瞳や水着の模様に水転写デカール(水で濡らして、台紙からスライドさせ貼付するシール)を使用します。
上手く作業すれば、水と綿棒があれば貼り付けできますが、デカールを密着させる軟化剤などは揃えておくと安心です。
その他の用品

塗料を撹拌するための金属製スティック、塗装前にホコリと静電気を取り除く除電ブラシなどもあると便利です。
■塗装前の洗浄
塗装に入る前に、洗剤でパーツに付いた手の油や削りカスなどの汚れを落としていきます。
それと同時に、クレンザーなどの研磨剤を洗剤に混ぜて足付け作業(表面に細かいキズを付け、塗料の定着をよくする作業)も行います。

歯ブラシ、台所用洗剤、クレンザー(研磨剤)を用意。
細かいパーツを無くさないよう、注意しながら洗っていきましょう。

色と色の境目は、後々のマスキング作業のさいに塗料が剥がれないよう、入念に足付け作業をしていきます。
洗い終わったら水気を切り、乾燥させます。
■エアブラシの使い方
エアブラシの使い方を簡単に説明していきます。
塗料の希釈

エアブラシで塗装するには、ビンに入ったままの濃度ではうまく塗装できないので、塗料をうすめ液で希釈する必要があります。
新品のラッカー系塗料では、「Mr.カラー 1:うすめ液 2.5」、「ガイアカラー 1:うすめ液 3」の割合で希釈すると丁度良くなります。
2024/6月追記
GSIクレオス公式X(Twitter)で目安希釈比が投稿されていたので、こちらも参考にしてください。
ただし、時間が経って溶剤が揮発してしまった塗料を希釈する場合は、上記の割合がアテにならないため、塗料を垂らしたときの速度や、実際に吹いた時の感覚などで判断する必要があるので、とにかく経験を積むことが重要です。
塗り重ねの順番
基本的には、明るい色→暗い色の順で塗っていきます。
暗い色→明るい色の順だと、綺麗に発色せずに何度も塗り重ねる必要があります。

白色と黒色の上から、黄色と青色を塗ったのがこちら。
暗い色が下地では、綺麗に発色しないことが分かります。
空気圧や距離

空気圧は使用しているコンプレッサーや塗料の濃度、人によって違うのですが、0.1MPaを基準に、細吹きは0.08MPa、サフ吹きなどは0.12MPa以上で塗装するといいでしょう。

エアブラシとパーツの距離は、細吹きなら1.5㎝~3㎝くらい、サフ吹きなど大面積を塗る場合は10cm前後離します。
その他、参考になる動画など。
■エアブラシ塗装
ここから実際の塗装作業に入ります。
ガレージキットの最も重要な作業なので気合を入れていきましょう。
サフ吹き

ガレージキットはプラモデルと違い、パーツに塗料をそのまま吹いても、定着せずに剝がれてしまいます。
そこで最初に塗料の食い付きを良くするために、下地処理剤であるプライマーを塗布する必要があり、このプライマーと、キズ等を消して均一な色にするサーフェイサーが一つになったのを使用していきます。
またサーフェイサーには大別して、グレーサーフェイサーとホワイトサーフェイサーがあり、この後の上塗り塗装の発色も考えて、ホワイトサーフェイサーを使用するのがいいでしょう。

まずは表面のキズのチェックのため、軽く吹きます。
最初から厚吹きはNG。

乾燥させたらキズの確認→ 気になるところがあればヤスリ掛け→ またサフを吹くを繰り返してサフ吹きは完了です。
場合によっては何度もサフを吹くため、厚塗りならないように軽く吹くことを意識してください。
肌色

美少女フィギュアで最重要な作業の一つ、肌の塗装。
使用する塗料は
・サーフェイサーエヴォホワイトとフレッシュを5:3で混色した肌色ベース
・Mr.カラー ラスキウス クリアペールレッド
・Mr.カラー ラスキウス スムースパールコート

まずは肌色ベースを均一にベタ吹きします。

次にクリアペールレッドを、パーツの境目(色の境目)やヘソ、あばら骨など、陰になる部分にシャドウ吹きしていきます。

ある程度作業が進んだら、色味が均一かどうか他のパーツと見比べてみます。
均一でバランスがとれていれば、スムースパールコートを吹いて肌色は完成。

顔には瞳デカールを貼るさいに、表面がザラザラしていると失敗しやすくなるので、光沢クリアーを吹いておきます。
髪

イリヤの髪の塗装に丁度いい塗料があったので、これをそのまま使います。
・フレームアームズ・ガールカラー プラチナブロンドベース
・フレームアームズ・ガールカラー プラチナブロンドシャドウ

サフ吹きで塗ったホワイトサフを活かすように、プラチナブロンドベースをハイライト部分を残すように塗っていきます。
プラチナブロンドシャドウを、髪の裏側や奥まった所、髪の先端部分に塗って完成です。
水着・マスキング作業
水着パーツにはマスキング作業が必要なところがあるので、順を追って解説していきます。

まずは水着とスカートの白いところを塗っていきます。
・ホワイト
・RX-78ホワイトVer.アニメカラー

ベースにホワイト、シャドウにRX-78ホワイトVer.アニメカラーを吹き、しっかりと乾燥。

マスキング箇所に、細切りにしたマスキングテープをシワができないよう、ピンセットで掴みながら貼っていきます。
マスキングテープを細切りにすると、曲面に馴染みやすくなります。

周囲に幅広のマスキングテープを貼っていきます。
細いテープに直接、重ねるように貼ると隙間が出来やすくなり、その隙間から塗料がハミ出してしまうので、少し隙間を空けて貼ります。

細いテープと幅広のテープの隙間を、爪楊枝などを使いマスキングゾルを塗って埋めていきます。
塗り漏れ防止のために、乾燥したらもう一度ゾルを塗っていきます。

マスキングを終えたら、水着の緑色を塗ります。
・Mr.カラー ラスキウスアウラ 浅葱色
・ガイアカラー 純色グリーン
・Mr.カラー GXディープクリアブルー
・Mr.カラー GXクリアグリーン

ベース色は浅葱色にホワイト入れ明度を上げ、純色グリーンで色味を調整したものを塗装。
GXクリアグリーンにGXディープクリアブルーを混ぜたのを、シャドウに吹きます。
塗装が完了し、乾燥したら丁寧にマスキングを剝がしていきます。

マスキングを剝がしたら、塗料のハミ出しや、境目がガタガタになっている場合があるので修正していきます。
修正方法には、筆でのリタッチ、ハミ出した所を新品のデザインナイフで撫でるように削る、綿棒に粗目のコンパウンド付けて研く、などの方法があり状況によって使い分けます。

水着パーツにも、後でデカールを貼るので光沢クリアーを吹きます。
■筆塗り

細かい筆塗り作業に入ります。
アクリル塗料やエナメル塗料は、筆塗りに適した濃度で出荷されているので、そのまま筆塗り出来ます。
筆に含ませる塗料の量は、穂先の3分の2くらいを目安にします、付けすぎはNGです。

筆塗りでの筆の動かし方は、縦方向、横方向など一方に動かすのが原則です。
半乾きのうちに縦、横と筆を動かしたり、重ね塗りをするとムラになってしまうので、しっかりと乾燥させてから重ね塗りするようにしましょう。

水着の花飾りは、先にエアブラシでイエローを塗ってから、エナメル クリアーオレンジを中心に塗ります。

腕飾りには、エナメル ハルレッド、チタンゴールド、クロームシルバーを使用。

ピンクにホワイトを足した薄ピンク色で、手や足の爪を塗ります。

先程の薄ピンク色で口内を塗り、歯をホワイトで塗装。
■デカール貼り
ここからデカール貼りの作業に入ります。
このキャラグミンシリーズや、最近のディーラーキットの中には、瞳デカールが付属しているので、難しいアイペイントを省略できて初心者でも取っ付きやすくなっています。

まずは説明書や完成写真などで、デカールの貼る位置をよく確認しておきます。

次に水とティッシュ、綿棒、ピンセット、ハサミ、マークフィットなどを用意し、ハサミでデカールを切り出します。

デカールを水に入れ、1分ほど浸けると台紙に水が染み込み、台紙の接着剤が溶け出します。
そうしたらデカールを水から引きあげ、ティッシュの上に置き余分な水分を取り除く。

デカールが台紙から動くのを確認したら、貼り付け位置にスライドさせて貼り付けます。

水を含ませた綿棒で、デカールの位置を微調整したり、綿棒を回転させながら間の空気を抜いて密着させます。

位置合わせのさい、髪パーツを付けて位置の確認をします。

位置の微調整している間にデカールの水分が抜け、動かせなくなってしまったら、デカールとパーツの間に水を足してやります。
その場合、デカールの糊が完全に溶け出してしまい、定着しない恐れがあるのでマークフィットなどを使います。

マークフィットは、曲面などのデカールが密着しにくい場所に使うと、デカールを軟化させて密着するようになり、さらに接着力も高める軟化剤です。
今回は水で薄めたマークフィットを主に使用します。

デカールの上からマークフィットを塗り、しばらくするとデカールが軟化し、パーツに密着し始めます。
まだシワや隙間などが残っていたら、塗れた綿棒で優しく押し出します。

残りのデカールも同様に貼っていきます。

デカールの厚みで、パーツとの間に僅かに段差が出来るので、十分に乾燥させたらクリアーを吹いて段差を埋めます。

デカールを上手く貼れていれば、このままつや消しを吹いても段差は目立たないのですが、1500番あたりのヤスリで慎重に段差を均して、再度クリアーを吹いて段差を埋めれば、デカール貼りは完了になります。
■仕上げ
つや消し

仕上げに、各パーツごとにバラバラなツヤを、つや消しを吹いて整えます。
ツヤを均一にすると、おもちゃっぽさが消え完成度がグッと高まります。
また、爪などにクリアーを塗って、消えたツヤを復活させます。
メイク

タミヤ ウェザリングマスター Gセットを使って、顔にメイクを施していきます。

頬紅にサーモンを、目元(目頭や目尻)、眉の下、顔の輪郭にマロンでメイクします。
失敗したときは、メラミンスポンジで拭き取れるので、失敗を恐れずにメイクしていきましょう。
メイクが終わったら、つや消しをもう一度吹いてメイクを保護します。
組み立て

全ての作業が終わり、最後に組み立てます。
強度が必要なところや、細かいパーツなどはエポキシ接着剤で固定して完成です。
■完成写真

以上で、初心者向け講座「ガレージキットの作り方」は完結になります。
この記事を参考に、ガレージキットを制作してみてはいかがでしょうか。
どうしても無理だと思いましたら、当店で制作代行いたします。
長い記事を最後までお読みいただきありがとうございました。
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